Sato Tomoko

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齋藤 智先生のこと
明日で震災から19年が経ち、気がつくと20歳で亡くなった友人の倍の人生を歩んでしまいました。この時期になるとひとしきり学生時代のことを思い出してしまう。そんな中、恩師の訃報がご子息から届きました。

齋藤智先生が昨年12月23日に77歳で急逝されたと。齋藤先生は神戸大学の元教授、私の学部と修士課程の指導教官。お世話になったなと心から思う先生は何人かいるけど、大学時代の美術史の先生と齋藤先生は、私に美術とは何か、絵画とは何かを常に考えさせてくれる存在。お二人がいなければ私は絵描きにならなかったと思う。
先生への感謝を込めて、少し書き留めておく。



私が学んだ神戸大学発達科学部には旧教育学部の教育美術の名残で、実技の先生が数名いて、私が入学した時の絵画担当が齋藤先生。入学して最初の授業で先生は作品をスライドで見せながら、自分のことを語った。その時に見せてくれたのが、70年代に版画家として高い評価を得たこのシリーズ。


今見ると、とても美しいと思う。でも受験勉強と受験美術の価値観にガチガチだった田舎者の私は、これが「作品=アート」だということにすら気づかない鈍感なタイプの人間だった。この人は何なのだろう。私には分からない事をやっている人だと漠然と思った。

大学1年生の時、小手先だけの私のデッサンを「君の絵はスカスカだ」と言ったのは齋藤先生。卒業してから何年もたって初めて個展を開いた時に「学校の先生みたいな絵を描いてる」と相手にもしてくれなかったのも齋藤先生。頂いた花をギャラリーに飾っていた時に「この空間で何を見せたいんだ、花なんか飾って恥ずかしくないの」としかってくれたのも齋藤先生。

メルロ・ポンティが大好きで、お酒が大好きで。およそ大学教授らしい所のない人。「来週の授業、学校に来なくても良い?僕いなくてもいいよね」と聞いてくる。時にはこっちから電話かけて「大学に来て下さい」とお願いしたり。そうかと思ったら「僕ね、ちょっと頑張ってちゃんと教育しようと思うんだ」なんて言い出したり。抽象表現の授業担当なのに具象の授業をして、非常勤の具象の先生に抽象の授業を押し付けたり。試験監督を忘れてたり。飲みに連れて行ってくれても、学生なんかほったらかしでバーのママを本気で口説いてたり。

卒論の指導なんて何もしてくれなかったのに、私が大学院に受かるかどうかは心配して心配して、先生の方がそわそわして。先生に近寄ると試験内容を言い出しそうになるので「先生、犯罪になるから頼むから黙ってて」と院試の直前は先生を避けてみたりしたことも。

「このままじゃ絵画がダメになっちゃうよ、もっとちゃんと絵画とは何かって考えないといけないって思うんですよ」というのが口癖。ちゃらんぽらんで、まともな授業をしないから、悪く言う学生もいた。でも生き様を見せてくれる人だった。齋藤先生はアーティストとして行き詰まって苦しんでいる姿を、決して隠そうとしなかった。破れたソックスとのびたセーターを着て、ため息をついていた。

「絵画とは何か考えないと、絵画が死んじゃうよ」と呪文のように繰り返されたその言葉が、私の前にはいつもある。先生の言葉に振り回されながら、私が何とか自分なりに絵画に向き合ってこられたのは、先生が本当に絵画や芸術を必要としている人だったから。その姿を見ていたから。そういう齋藤先生をとてもチャーミングに感じていたし、私は齋藤先生が大好きだった。

| 美術・芸術のこと | 22:20 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
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| - | 2018/03/23 10:08 AM |










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