Sato Tomoko

painting,painting,painting!
ケルン
 ベルリンからケルンへ移動してはや10日がたってしまいました。もう明日でドイツは終わり。アーティストや留学時からの友だちなど含めて、20人近い人から話を聞くことができました。ケルンでは一通り友だちと会ってしゃべるだけで日が過ぎてしまいます。


お食事に招待されたり。




今の季節だからとプラムのトルテを出してくれたり。手ぶらで伺って、話を聞きたいだけ聞いて、おやつまで出していただくなんて、本当、ありがたいです。友だちの新しいアトリエを見に行ったり、そこでまた新しいアーティストと知り合ったり。

ドイツはアーティストに優しい国だと良く聞きます。実際、私もそう思います。でもやはり現実は決して楽ではありません。

ドイツの消費税は19%。食品など日常の必需品は7%。19か7のどちらかです。これまで、芸術作品にかかる消費税は7%だったそうですが、今年の1月からギャラリーが販売した場合は19%になったそうです。アーティストが直接販売した場合は納税義務は7%のまま。アーティストの負担が直接上がったわけではないですが、ギャラリーは負担が増えるため作品の値段を上げるなど、対応を考えざる得ません。

ベルリンの国立の美術館は毎週木曜日の午後からハッピーサーズデーとして、入場料が無料になっていたのに、それも経済的な事情とかでサービス自体がなくなりました。

ケルンも毎週第一木曜日が美術館の入場無料の日ですが、これも数年前からケルン市民だけに制限されました。

市がサポートしている友だちの使っている共同アトリエは、アーティストは家賃だけ支払い、光熱費は補助で賄っていたそうですが、急に光熱費もアーティスト個人が負担するようにと通達があったとか。アトリエを利用しているアーティスト皆が協力して、これから戦うのよ、と。

私が知っているだけでもケルンの2つの大きな共同アトリエが、この数年で取り壊されました。もっとお金になるマンションを建てるのだとか。これも市の政策。文化に対する予算が年々削減されているのを、私のような旅行者でも感じます。

もう一つ興味深く聞いたのが、ギムナジウムで美術の先生をしている二人の知人からの、ドイツの美術教育の現状について。日本の義務教育の仕組みとか、学級の人数、美術の時間数などと比べながら、違いや共通する部分など、何時間あっても話が尽きなません。

もっとも驚かれた点の一つ目は、美術のキット教材が流通していて、かなり多くの教育現場で安易にキット教材が使われていると伝えたとき。二人とも目を丸くしてました。マテリアルを買うなら分かるけど、どうしてセットを買う必要があるの?と。芸術の大切な部分が失われてしまう、と衝撃を受けてました。

二つ目は、多くの先生は授業へ真摯に取り組んでいると前置きした上で、忙しすぎて教材研究ができない先生が多いこと。もしくはよりよい授業を考えようとすることへの意欲がなくなるほど雑務がある、と伝えたとき。「教師の仕事はいかに良い授業をするか、でしょ? 職場でそれ以外のことで謀殺されるなんて、どうして?」と。

私のドイツ語が拙いため、なかなかお互いにすべてを理解はできませんでしたが、ドイツの教育システムも大分分かってきて、本当に興味深かったです。ギムナジウムがどういう教育機関なのかもやっと見えてきました。今回聞いた内容を落ち着いて整理しないと。

| 美術・芸術のこと | 05:50 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
展覧会の成果



気がつくと1ヶ月以上たちますが、無事に展覧会は終わりました。メインの赤い作品は去年の展覧会と配置を変えて、空間に合わせて展示。

面積も展示の配置上も、この赤い連作が展覧会のメインになるのですが、私にとっての成果は小品にありました。




どれも長辺が40cmほどの作品ですが、今までできなかったことができて、布のシリーズになってから初めて納得のいくクォリティが出せたなと思います。

非常に些細なことなのですが、何人か違いに気づいてくださった方もいて、それは励みになりました。なかなか理解されにくい作品だなあと自分で思いながらも、マイペースで次ぎにつなげて行きたいと思います。
| 美術・芸術のこと | 03:57 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
アトリエの新兵器
個展は今週の金曜日からで、搬入は木曜日。もうここまでくると作品の乾燥を待つだけで、特にすることもなく。制作が済んでしまうと後はもう「天命を待つ」というより「果報は寝て待て」と言う感じです。今日は身体のメンテナンスにプールに行ったりしておりました。

 
今年の新作、みどり君。相変わらずの布シリーズですが、少しずつ実験しています。小さい作品ばかりですが何とか10点程新作が仕上がったので、大阪に持って行けそうです。


いつも展覧会の後は次の制作までにブランクができてしまうので、今回は次の作品の準備も始めています。個展がすんだらすぐに取りかからないと。


最近、アトリエにやってきた新しい仲間です。5月に倉敷市玉島の一鱗であった川月清志さんの家具の展覧会で購入。何かちょっと変な形なんですが、それがどうしても気になって気になって。しかも手作りなのに破格のバーゲン価格で、もうこれは手に入れるしかない!と。


雑然としたアトリエの空間にすっかりなじんで、新入りとは思えない風格です。座る部分が狭く見えますが、座り心地がとても良い。高さも良い。そして安定感も良いんです。制作するのにとても良いんです。心地がいいとやっぱり集中力も長続きするし、道具や環境を整えることが大事だなあと改めて思いました。

今年は年明けからずっこけることが多くて、アンラッキーが続いているんですが、2014年の折り返し地点でこの流れを変えたいなあと思います。まあ、個展がこけたら、アンラッキーと言うよりは単なる実力不足なわけですが(;一_一)

| 美術・芸術のこと | 18:43 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
展覧会の準備

来月、6月20日から久しぶりに大阪で個展です。制作は余りはかどっていないのですが、案内状だけは完成しました。


4月に作ったパネル。


ようやく下書きを終えて一層目。思ったより乾きが遅くて、作業がなかなかはかどらず。

毎回毎回、ちょっとずつ手順を変えて実験してます。今回の実験が仕上がりにどう反映するか分かりませんが、ぼちぼち制作しているときがやっぱり一番楽しいです。
| 美術・芸術のこと | 20:05 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
当面のアトリエ
ここ数年、アトリエを探し続けています。なかなか場所とか金額、条件が合うところが見つからず、制作に腰を据えられないままの状態が続いています。6月に急に個展をさせていただけることになり、これは本当に制作場所が必要だなと思っている中で、当面使って良いよと声をかけてもらったのが↓ここ。

 
納屋を改築した2階建ての木造建築。1階は知人の工房になってます。


20年以上使っていなかったので、ホコリだらけだった和室。畳をはがして、大掃除して、壁にベニヤを付けて使えるようになりました。


すでにパネルに地塗までは終了。


この後表面を磨いて、油彩へ。

アトリエは自宅から北西に車で1時間の、かの有名な星の美しい町です。運転にもようやく慣れてきました。人里離れた場所なので周りは山と畑だけ。最寄りのスーパーまで車で20分かかります。驚くほど静か。


道々、木々や花の色が楽しませてくれて、良いドライブです。


これも道中に。こんな立派な鯉のぼりも倉敷市内ではほとんど見ることが無くなって来ました。昔は我が家でさえ、このくらいの鯉のぼりを庭に据えていたなあと遠い記憶がよみがえりました。

これまでは制作の合間もメールを見たり、仕事をしていたのですが、このアトリエではネットの環境もないのでできません。乾かしている時間や休憩の時間に久し振りに落ち着いて読書を楽しんだり、語学の勉強をする余裕も生まれました。何が幸いするかは分らないものです。
「人間万事塞翁が馬」だと今年はよく思います。

6月の個展では、ここから生まれた作品が展示されます。

| 美術・芸術のこと | 08:33 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
2013年の作品
 ホームページを更新しました。2013年の作品をアップしました。


http://tomoko-painting.com/works/2013/index2013.htm

| 美術・芸術のこと | 21:21 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
齋藤 智先生のこと
明日で震災から19年が経ち、気がつくと20歳で亡くなった友人の倍の人生を歩んでしまいました。この時期になるとひとしきり学生時代のことを思い出してしまう。そんな中、恩師の訃報がご子息から届きました。

齋藤智先生が昨年12月23日に77歳で急逝されたと。齋藤先生は神戸大学の元教授、私の学部と修士課程の指導教官。お世話になったなと心から思う先生は何人かいるけど、大学時代の美術史の先生と齋藤先生は、私に美術とは何か、絵画とは何かを常に考えさせてくれる存在。お二人がいなければ私は絵描きにならなかったと思う。
先生への感謝を込めて、少し書き留めておく。



私が学んだ神戸大学発達科学部には旧教育学部の教育美術の名残で、実技の先生が数名いて、私が入学した時の絵画担当が齋藤先生。入学して最初の授業で先生は作品をスライドで見せながら、自分のことを語った。その時に見せてくれたのが、70年代に版画家として高い評価を得たこのシリーズ。


今見ると、とても美しいと思う。でも受験勉強と受験美術の価値観にガチガチだった田舎者の私は、これが「作品=アート」だということにすら気づかない鈍感なタイプの人間だった。この人は何なのだろう。私には分からない事をやっている人だと漠然と思った。

大学1年生の時、小手先だけの私のデッサンを「君の絵はスカスカだ」と言ったのは齋藤先生。卒業してから何年もたって初めて個展を開いた時に「学校の先生みたいな絵を描いてる」と相手にもしてくれなかったのも齋藤先生。頂いた花をギャラリーに飾っていた時に「この空間で何を見せたいんだ、花なんか飾って恥ずかしくないの」としかってくれたのも齋藤先生。

メルロ・ポンティが大好きで、お酒が大好きで。およそ大学教授らしい所のない人。「来週の授業、学校に来なくても良い?僕いなくてもいいよね」と聞いてくる。時にはこっちから電話かけて「大学に来て下さい」とお願いしたり。そうかと思ったら「僕ね、ちょっと頑張ってちゃんと教育しようと思うんだ」なんて言い出したり。抽象表現の授業担当なのに具象の授業をして、非常勤の具象の先生に抽象の授業を押し付けたり。試験監督を忘れてたり。飲みに連れて行ってくれても、学生なんかほったらかしでバーのママを本気で口説いてたり。

卒論の指導なんて何もしてくれなかったのに、私が大学院に受かるかどうかは心配して心配して、先生の方がそわそわして。先生に近寄ると試験内容を言い出しそうになるので「先生、犯罪になるから頼むから黙ってて」と院試の直前は先生を避けてみたりしたことも。

「このままじゃ絵画がダメになっちゃうよ、もっとちゃんと絵画とは何かって考えないといけないって思うんですよ」というのが口癖。ちゃらんぽらんで、まともな授業をしないから、悪く言う学生もいた。でも生き様を見せてくれる人だった。齋藤先生はアーティストとして行き詰まって苦しんでいる姿を、決して隠そうとしなかった。破れたソックスとのびたセーターを着て、ため息をついていた。

「絵画とは何か考えないと、絵画が死んじゃうよ」と呪文のように繰り返されたその言葉が、私の前にはいつもある。先生の言葉に振り回されながら、私が何とか自分なりに絵画に向き合ってこられたのは、先生が本当に絵画や芸術を必要としている人だったから。その姿を見ていたから。そういう齋藤先生をとてもチャーミングに感じていたし、私は齋藤先生が大好きだった。

| 美術・芸術のこと | 22:20 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
ぬかつくるとこのこと
先週、大月 ヒロ子さんの取材に図々しく同行させてもらって、早島にある生活介護事業所「ぬかつくるとこ」を見学させていただきました。


住所を参考に向かうと立派なお屋敷。どんな歴史ある建物だろう、蔵もあるな、と思いきやその蔵が「ぬか」さんなのでした。


入り口にはおしゃれに「nuca」と。


反対の道路沿いの入り口にもおしゃれな看板。「ぬか」の噂は聞いていたものの、実際に蔵の外観とかを見ると、本当にここが「生活介護事業所」なのかと不思議な気持ちに。


そして、ぬかの中。とにかくカラフルで、木の色があったかくておしゃれで、日が差してぽかぽか。

認識違いがあるかもしれませんが、生活介護事業所は「常時介護が必要な身体障害のある方を対象に日常生活上の介護や支援、創作活動等の機会を提供し、身体能力・日常生活能力の維持向上に向けた支援を行う場所」というものだと理解しています。

学生時代の教員免許取得のための研修や、アートリンクプロジェクトに関わる中で伺った作業所などの雰囲気は、施設として最低限のものを用意したという空間が多かったように思います。それぞれに事情があるものの、入所者のためにもデザイン的に美しいものやきれいな色を配慮するという部分まで気が回っていない感じで。

アプローチがちょっと違うだけで、若い人たちのセンスがすごく生きている場所でになっていました。


伺った日のぬかのお昼ご飯。事前に連絡を入れると見学者もお昼が頂けます(
有料)。器もお盆も素敵。何よりお料理が美味しい!「ぬか」の創設メンバーにはアーティストも数人いて「おいしいご飯」へのこだわりは相当強かったとか。最低限を間に合わせるのではなく、ベストを望むのはアーティストらしい発想かも知れません。


食後はスタッフと入所者の方に見学者まで一緒に、なぜか見んな手に楽器を持って歌ったりリズムとったり。

入所者の方たちの持っているクリエイティブな部分を引き出して、楽しく創造的に過ごしてほしい、そんな姿勢が伝わって来ました。そして地域や周りの方たちともオープンな関係を築きたいということも。

スタッフの中にかつてアートリンク・プロジェクトで一緒だった作家さんがいて、なつかしい再会もありました。聞くと介護福祉士の資格を取ったとか。障害者の方達と一緒に創造的な活動をすることがたくさんの刺激を与えてくれるし、とにかく楽しいし、自分に合っている。作家として制作する部分も大切にしているけど、と話してくれました。

昔、同じプロジェクトで頑張った作家さんが、こうやって自分の本当にやりたい事をみつけて、自分の制作も続けながら新しい事にも挑戦しているのを聞いて、とっても嬉しかったです。

彼だけでなく、他のスタッフの皆さんも自由で楽しそうでお洒落で、無理がなくて。使命感や正義感といったことじゃなく、自分も周りも楽しい居心地の良い場所を探していったらこうなった、という雰囲気。もちろん大変な事も一杯あると思いますが、この空気が変わらない限りここはすごい場所になっていくなと感じました。
| 美術・芸術のこと | 16:15 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
終わりました



倉敷市立美術館での新鋭作家展、無事終わりました。たった6日間の展覧会という短さでしたが936人の来場者があり、日本人ってすごいと感心。師走の忙しい時期に日程を調整して見に来てくださった方、そして見に行きたいなあと思ってくださった方、ありがとうございました。

個々の作品では課題がたくさん出ましたが、それでも納得のいく展示ができました。それが何より良かったと思っています。


今回の新作シリーズ、12枚の内の一枚。12枚並べると18メートルです。


部分。


ディテールはこんな感じ。

頭の中にある理想に比べたら、30%も実現できていません。100点満点の30点。成績で言えば「不可」なんです。でもそれを展示するという全くもって傲慢な行為。30点以上の展覧会をした事が無い(笑)。


反対の壁には2012年の作品。

主催者側からは「旧作を並べて展示したら良い」と最初に言われたのですが、駆け出しのペーペーの絵描きが回顧展みたいなことは格好悪くてできません。今回の新作を作るために、色んな方に無理を言って協力してもらって、時間を作って制作できて、本当にありがたかったです。

私が言うようなことではありませんが、主催者側も「新鋭作家」と名の付く展覧会をするのだから「旧作で良い」なんて甘やかさずに「必ず新作を出せ」と発破をかけるくらいで良いのじゃないかなあと思いました。

色んな表現方法がある中で、やっぱり私はこつこつと一人で孤独に絵画に向き合うのが一番好きだなあと改めて思いました。残念ながら次の展覧会の予定はまだ決まってないのですが、課題がたくさんあるので制作できる環境を早く整えて、絵画と向き合って行きたいと思います。


おまけの「玉島時間」。
| 美術・芸術のこと | 22:10 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
搬入終了
 明日から始まる「第15回倉敷新鋭作家選抜美術展」の搬入が無事に終わりました。こんなにたくさんの方に手伝ってもらって搬入するのは初めてです。


ものづくりしている方達ばかりが集まっているので、作業が非常に早い。それでも20人近いスタッフで5時間みっちりかかりました。


関係者の皆様、長時間本当にありがとうございました。
明日9時からのスタートです。
どうぞよろしくお願いします。

| 美術・芸術のこと | 00:20 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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